そろそろ万年床にするべえかア、と口にして、まだ暑い日があるからやめときイ、と言われたのは、我らがタイちゃん、殿山泰司だが(『JAMJAM日記』<ちくま文庫>より)、そろそろブラームスにするべえかアと自問自答しているのが、僕中瀬宏之である。
と、言っても、夏の暑い盛りに全くブラームスの音楽を聴いていなかった訳ではなくて、なんやかんやと理由をつけては(って、無理から理由なんてつける必要もないか。聴きたい時は聴きたい音楽を聴け!)、ブラームスのCDをかけ続けちゃいたんだけれど、人間気分というものは大きくて、エアコンという人工的な涼しさの中で聴くブラームスには今一つ、どころか今二つも今三つもぴんとこない。
その点、気温がだんだんと下がってきて、めっきり涼しくなってきた頃に聴くブラームスは格別だ。
特に晩秋、もう間もなく冬が訪れようという頃に聴くブラームスの侘びしさ哀しさ美しさときたらああた、まさしくえも言われぬ素晴らしさ、そら涙のひと粒ふた粒出てこようてなもんだ。
むろん、ブラームスだからって何でもかけりゃあいいってもんじゃない。
それこそ交響曲第1番みたいな、ずずんべどどんべぷわーぷわー(by許光俊)と不細工に鳴り轟く騒々しい音楽にはご遠慮願って、ここは室内楽曲をじっくり愉しむことにする。
中でも、弦楽6重奏曲第1番、弦楽5重奏曲第1番、ピアノ4重奏曲第1番、ホルン3重奏曲あたりの切なさしんねりむっつり感はたまらないなあ。
何度聴き返しても飽きがこない。
暮れ行く秋の夕陽や、色付く樹々の葉を眺めながらブラームスを聴けば、過ぎ去った日の想い出も甦ってきて、私もあなたもノスタルジーの時…。
と、ここまで書いてきて、ブラームスの室内楽曲とはなんと似ても似つかぬ躁的文章かいなと我ながら愕然となってしまったが、よくよく考えてみればこれも当たり前。
何せ、ブラームスの音楽自体が躁鬱気質丸出しなんだもの(例えば、ホルン3重奏曲なんてそのよい見本)。
そら、文章だっておかしくなってきますわね。
まあ、いずれにしても、これからの季節はブラームスの室内楽曲がお薦めということ。
ブラームス、ブラームス、ブラームス渋いかしょっぱいか。
やっぱりブラームスは秋にかぎる!
posted by figaro at 10:58|
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