2012年04月21日

たそがれ酒場

☆たそがれ酒場<1955年、新東宝>

 監督:内田吐夢
 脚本:灘千造
 音楽:芥川也寸志
(2012年4月21日、京都文化博物館フィルムシアター)


 色川武大の『寄席放浪記』<河出文庫>に収められた、色川さんと鈴木桂介、淀橋太郎による鼎談「キラ星のごとく輝いていた浅草」は、浅草の今は亡き喜劇人たちを活写して余すところがないが、その中で、窮乏生活にあった有馬是馬が息子の茂を子役として使ってくれと内田吐夢に売り込みに行ったところ、内田監督から「子供はいいから、あんた出ろよ」と言われたというエピソードを鈴木桂介が語っている。
 それを、「『たそがれ酒場』だ。酒場のマネージャー約で、あれはなかなかのものでしたよ」と、色川さんが受けているのだけれど、その『たそがれ酒場』、有馬是馬のマネージャーばかりでなく、全篇、なかなかのもの、どころかなかなか以上のものだった。

 都会のある大衆酒場の開店間際から閉店直後に到る数時間を、いわゆるグランド・ホテル形式で描き出した群像劇だが、まずもって登場人物の出し入れ、エピソードの積み重ねがぴしっと決まっていて、まるで優れた舞台作品を観ているようだ。
 そして、個々のエピソードから、敗戦から10年経っても未だ癒えぬ戦争の傷や、混沌とする社会状況、さらには老いていくこと、次代へと何かを繋げていくこと、といった内田吐夢自身の様々な想いがしっかりと浮かび上がって来て、強く心を動かされる。
 また、『限りなき前進』など戦前の内田作品で知られた小杉勇が扇の要の役回りを演じて見事(『闘牛士の唄』での滑稽な動きや、ラストの真情あふれる言葉等、とても印象深い)なほか、先述した有馬是馬、高田稔や江川宇礼雄、津島恵子(美しい)、野添ひとみ(かわいい)、加東大介、東野英治郎、多々良純、丹波哲郎、宇津井健、天知茂(ワンシーンのみでわかりにくいか)といった新旧の顔触れが、自らの柄に合った演技を披歴しているし、丁寧に造り込まれた酒場の様子や老音楽家(小野比呂志)に寄り添うわんこも観ていて愉しい。

 加えて、実際に声楽家である宮原卓也(美声。トラジまで歌っている)や野添ひとみらが歌うクラシックの歌曲、オペラのアリア、歌謡曲、民謡、さらにはレコードの軍歌、うたごえ喫茶の歌(『若者よ』)といった音楽が、この『たそがれ酒場』で大きな役割を果たしていることも忘れてはならないだろう。
 しかも、一例を挙げれば冒頭で宮原卓也演じる青年の歌うシューベルトの『冬の旅』の「菩提樹」のように、単に音楽が風俗の表現だけではなく、全体の物語、作品の世界観と密接に結びついていることが嬉しい。

 いずれにしても、一時間半という上映時間の中で、語るべきことがきっちりと語られた一本で、観に行って本当によかったと思う。
 ああ、面白かった!
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2010年09月06日

山本薩夫生誕100年記念 妄想映画館『日本の日蝕』

☆『日本の日蝕』(日本の日蝕をつくる会)



 榊原康隆総理大臣(滝沢修)が内閣改造を断行したその夜、毎朝日報社会部記者粕谷肇(山本圭)は、何者かによって男(辻萬長)がひき逃げされるのを目撃する。
 男が粕谷に遺した言葉は、「太陽が、太陽が消える」というものだった。

 一方、粕谷の妹で帝都大学理学部助手の麻子(香野百合子)は、フィアンセで植物学の研究者春日部真介(中野誠也)が九州の孤島弥ノ島で謎の失踪を遂げたことを知る。
 その少し前、麻子には「ここは何かがおかしい」と記された真介からの葉書が届いていた。

 そして、二つの事件を追う粕谷と麻子にも、大きな魔の手が迫っていく…。


 現代日本の山本薩夫と呼ばれる、映画界の鬼才中瀬八郎が1970年代半ばに撮影した社会派大作が、今ニュープリントで蘇える!



 ・その他の主な出演者

 粕谷太郎(松本克平)、粕谷篤子(村瀬幸子)、春日部八重子(北林谷栄)、謎の女(太地喜和子)、下八川詠祐副総理大臣(小澤栄太郎)、小倉常敏外務大臣(根上淳)、松方義道大蔵大臣(芦田伸介)、本郷忠親法務大臣(嵯峨善兵)、飯田喜八郎通産大臣(北村和夫)、日高宗俊内閣官房長官(神山繁)、舟越傑防衛庁長官(大滝秀治)、野田純之助科学技術庁長官(加藤和夫)、宇田徹防衛庁次官(原田清人)、榊原多津子総理大臣夫人(月丘夢路)、桜庭悠一郎総理大臣秘書官(武内亨)、三島省吾憲民党幹事長(稲葉義男)、根津豊臣日同物産会頭(佐々木孝丸)、工藤仙吉日同物産常務(渥美國泰)、原秀春原子力開発公団総裁(永井智雄)、伍島誠民大日本国策研究会会長(内田朝雄)、湯浅昇帝都大学理工学部助教授(江原真二郎)、里見忍帝都大学理工学部教授(下元勉)、多田正兼毎朝日報社会部部長(鈴木瑞穂)、椎名次男毎朝日報政治部記者(梅野泰靖)、田崎耕一警視庁捜査一課課長(草薙幸二郎)、鈴木五郎警視庁捜査一課刑事(福田豊土)、御子柴謙蔵弥ノ島村村長(信欣三)、河合尚人医師(内藤武敏)、弥ノ島村村民(陶隆、片桐夕子、岸輝子)
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2009年05月23日

痺れる舌 もしくは、丸山薫の不愉快な悪戯(妄想映画館)

☆痺れる舌、もしくは丸山薫の不愉快な悪戯
 2009年、痺れる舌制作委員会

 監督:中瀬八郎
 脚本:中瀬八郎


 京都ふぐ毒殺人事件・林葉ますみ被告(渡辺えり)、及び謙蔵被告(温水洋一)の裁判員に選ばれた、人材派遣会社パワフルキャリアの人事調査部員丸山薫(占部房子)は、ふとしたことからこの殺人事件に、パワフルキャリアと取引のある日本お魚能力検定協会が密接に関係していることを知る。
 さらに薫は、日本お魚能力検定協会の理事長中窪登(石田太郎)と宏(井田國彦)父子が、日本お魚能力検定を利用して莫大な利益を得るとともに、その資金をアジア第三国の独裁者金中日(中村梅之助)や隣国の元大統領金万宝(小沢昭一)らに提供していたことも知る。
 一方、内閣情報局総裁・川勝健次郎(志賀廣太郎)や同副総裁兼行政警察長官・纐纈肇(小日向文世)の命で日本お魚能力検定協会に社員として潜入していた行政警察のスパイ嶋村弥六郎(木下ほうか)が何者かに殺害される。
 実行犯として疑われる、登の異母弟忍(鶴田忍)、哲(渡辺哲)、弥六郎の同僚藤坂冴子(麻生裕未)。
そして、司法のメスは日本お魚能力検定協会に入れられる。
だがそれは、日本の政財界の魑魅魍魎たち、内閣総理大臣・榊原貴信(津嘉山正種)、日本憲民党副総裁・穴吹隆和(江原真二郎)、同幹事長・木俣啓輔(横光克彦)、日本経済交流協議会代表幹事・石橋仙一(中野誠也)、大和水産会長・大和大作(井川比呂志)らによる黒い陰謀の序章に過ぎなかった。
 大日本国策研究会会員山藤元也(鳥肌実)による中窪登の刺殺、林葉ますみ事件の重要証言者(江藤漢斎)の自殺、薫の上司で不倫関係の相手佐々木義夫(光石研)とその妻敦子(片桐はいり)の謎の自動車事故死が続く中、薫は全ての真相を解明すべく大学時代の後輩で京都民衆新報記者の畑田優三(本根作寿英)に協力を依頼しようとするが、それは薫の同僚蜂田直美(安部聡子)の裏切りによって阻まれる。
 薫の父丸山政男(品川徹)母好江(根岸季枝)、妹晶(平岩紙)らにも迫る魔の手。
 果たして、薫は生き残ることができるのか?
 それとも?

 日本映画界を代表する異才で、21世紀の山本薩夫と評される中瀬八郎の最新作は、世情を賑わす数々の事件をモチーフに、中瀬監督自らが書き下ろしたシナリオによるメタ・クリミナルロマンの大作である。

<その他の主な配役>
冨樫知男/薫の同僚(桜金造)、正木厚/京都ふぐ毒殺人事件の主任弁護士(山本圭)、秋川留子/京都ふぐ毒殺人事件裁判員(菅井きん)、藤谷和人/同(宇梶剛士)、下八川平祐/農漁業食糧大臣(山本亘)、堺宗満/農漁業食糧次官(森下哲夫)、堀米康之/パワフルキャリア社長(大杉漣)、熊本誠道/潮水寺管長(大滝秀治)、鳩原宮雅仁/皇族(島田雅彦)、万秀達/茶道表万家宗主(筒井康隆)、万聡子/秀達の妹(柳美里)、若松大衆/大日本国策研究会首領(キタモトマサヤ)、里見究一郎/洛北医大名誉教授(山本學)、早川実行/京都民衆新報社主(鈴木瑞穂)、北川ほのか/同記者(宮部純子)、最後に全てを覆す至高の存在(三谷昇)


 この文章は、実在の人物団体組織とは一切関係がありません!
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2008年10月02日

10月のエンタメ情報追記(京都シネマの映画)

 昨日、10月のエンタメ情報という一文をものした直後に、京都シネマから毎月恒例の通信が送られて来た。
 で、興味津々中をのぞいてみると、これがああた、今月の京都シネマのラインナップの気になること気になること。
 残念ながら、これでは柳川の『チンチン・タランチーノ』は落選とせざるをえまい。

 まず、何としてでも観ておきたいのは、18日からの『わが教え子ヒトラー』(ダニー・レヴィ監督・脚本)。
 チャップリンの『独裁者』にも影響を受けたと思しきストーリー展開だが、『善き人のためのソナタ』で知られたウルリッヒ・ミューエの主演ということもあって、これは外せまい。
 ヒトラーつながりでいえば、4日からの『敵こそ我が友 〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜』も忘れてはならないだろう。
 クラウス・バルビーというナチス・ドイツの信奉者(彼は、戦犯として1987年に終身刑を宣告された)の半生を記録したドキュメンタリー作品で、第二次世界大戦後の歴史を振り返るという意味でも食指が動く。
 また、同じく4日からの、パトリス・ルコントの『ぼくの大切なともだち』も気になる一本だ。
 『タンデム』その他、手を換え品を換え、男性同志の友情を描いてきたルコントだけに、しっくりすとんとくる作品に仕上がっているのではないか?
(なお、僕が一番大好きなルコントの作品といえば、『リディキュール』である)
 他にも、ニキータ・ミハルコフ版の『12人の怒れる男』(25日から)、ホラー作品ではない黒沢清の『トウキョウ・ソナタ』(4日から)、御年95歳の新藤兼人の最新作『石内尋常高等小学校 花は散れども』(25日から)と、観たい映画が目白押しで、本当にいくらお金がいくらあっても足りゃしない。
 ああ、それにつけても金の欲しさよ…。
(「だから、もっと働け!」、と呼ぶ声あり。お説、ごもっとも)

 いやあ、映画って本当に素晴らしいものですねえ!
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2008年09月10日

アニメ『アルジェのイタリア女』が観てみたい!

 今日の朝日新聞朝刊の15面(13版)の「ベネチア映画祭を振り返る・中」という記事を読んでいて、どうにも気になるアニメ作品を発見した。
 と、言っても、ポーニョポニョポニョさかげの子、いやさかごの子、じゃないかたわの子、ではないかための子、違う違うさかなの子、という歌でおなじみの『崖の上のポニョ』でもなければ、押井守監督の『スカイ・クロラ』でもない。
 そうした日本の二つのアニメ作品のささやかな「返歌」として用意された、『アルジェの女』という40年前に作られた約10分の短篇アニメこそがそれである。
 で、朝日新聞の記事にも記されているように、この『アルジェのイタリア女』は、ロッシーニの同名のオペラ・ブッファを下敷きにした作品で、「クレヨンでさらさら描いた、塗り絵のような素朴な絵」という点も非常に興味をそそる。
 もともとのオペラのほうは、15年前のケルン滞在中に、そこのオペラでアルベルト・ゼッダ(ロッシーニのスペシャリスト)の指揮、ミヒャエル・ハンペの演出、フルッチョ・フルラネットらの歌唱による、抱腹絶倒血湧き肉笑う見事な公演を愉しんだ経験があるのだけれど、ぜひともこのアニメ作品にも触れてみたいものだ。
 僅か10分ということで、日本での公開は相当難しいのかもしれないが、どこか(誰か)なんとかしてくれないものか。
 ああ、観てみたい!


 *本文中には、今日の人権擁護の見地に照らして不適切不穏当と考えられる語句や表現がありますが、諸般の事情に鑑み、下書きどおりとしました。
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2008年09月07日

Whodunitと映画評

 Whodunit?
 Who done it?
 直訳すれば、誰がそれをやったか。
 意訳をすれば、犯人は誰か。
 推理小説と呼ばれるジャンルにおいて、全てではないけれど、ほとんど多くの作品にとって欠かすことのできない問題であり、その作品の肝となるべき部分である。
 だから、推理小説の種明かし、犯人ばらしをするのはもっての他で、たとえ「ネタバレ注意」などと明記されていても、他人が苦心惨憺してひねり出したアイデアを、僅か2、3行でささっとやっつけてしまうという所業には、僕自身、あまり感心ができない。
 と、ここまでは横溝正史の『真説金田一耕助』<角川文庫>の「Whodunitの映画化」の冒頭部分をアレンジしたものだけれど、推理小説であろうとなかろうと、ばらしていいことといけないことはきちんとある訳で。
 例えば、浜村純、じゃないや浜村淳という関西ではおなじみのラジオ・パーソナリティーがやっている映画紹介などその極で、この人のおしゃべりを聴いてしまったが最後、映画館に足を運ぼうなんて思えなくなってしまうこと、まず間違いない。
 なにせ、物語の大筋だけならまだしも、映画の勘所、急所となるべき部分まで懇切丁寧に説明してしまうのだから。
(ご本人は、うまくぼかしているつもりかもしれないが、映倫でなくとも不許可にしたくなるような、丸見え丸わかりぶりである)
 で、ここまではひどくなくとも、少々浜村淳的なにおいのする映画評というものは数多くあって、そのスタンスや物の書き様語り様は大きく異なるとはいえ、朝日新聞で沢木耕太郎がやっている映画レビューなど結構そのきらいが強いのではないか。
 今年観た映画の中で僕のベスト3に入るだろう『ぜんぶ、フィデルのせい』のラストシーンを見事にばらしていたこともそうだし、今度京都シネマで上映される『今夜、列車は走る』へのレビューでも、おちそのものがわかるような書き方がされているため、もう観んでもええわという気になってしまったりすらした。
(ただ、この作品は邦題そのものがねたばらしのようなものなんだけどね)
 まあ、沢木さんの場合、旧い友だちが口にしていた、「だって深夜特急の人でしょう」という言葉が全てを言い表わしているような気もするが。
 いずれにしても、人様に薦めたいと思う作品の批評、レビュー、紹介、感想ほど慎重になるべきものはないと、僕は強く思うのだ。
 皆様、ぜひぜひご注意下さいませ。
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2008年08月17日

デーヴ もしくは、朝倉総理の素

 あいにく放映そのものを観ることはできなかったものの、昨日の朝日新聞朝刊のラ・テ欄を見て、そうか、この作品があったんだと気がついた。
 アイヴァン・ライトマン監督の『デーヴ』(1993年)。
 と、記しただけで、勘のよい方ならわかってしまうだろう。
(てか、この文章のタイトルで丸わかりか)
 『デーヴ』は、ケヴィン・クライン扮する平凡な市井の男デーヴが、時の大統領(クライン二役)の身代わりとなっていつしか政治改革に着手していく、という理想主義的政治ドラマに、シガニー・ウィーバー扮する大統領夫人とのロマンスが加わった、まさしくアメリカ的な、小気味のいい作品であるが、どう考えたってこれ、木村拓哉主演の月9ドラマ『CHANGE』の下敷きになっているとしか思えない。
 相当前に観た作品だから隅の隅までは覚えていないけれど、ラスト近くでデーヴ=大統領が釈明演説中に倒れるところなど、まんま『CHANGE』だし、先述したデーヴと大統領夫人のロマンスは、キムタクとフカッチャンの関係に、また補佐官との確執は、寺尾聡との関係に、加えて黒人のSPとの信頼関係は、大倉孝二との関係に、巧く(?)移し換えられている。
 もちろん、こういうことを指摘したからと言って、僕はすぐさま『CHANGE』をぱくりだ剽窃だと厳しく糾弾するつもりはない。
(だいたい調べちゃいないけど、『デーヴ』のことは制作サイドもきちんとアナウンスしているのではないか?)
 そもそも、今年生誕百周年を迎えたマキノ雅弘や『丹下左膳餘話 百萬両の壺』の山中貞雄、さらには小津黒澤だって、アメリカ=ハリウッド映画の影響を丸まま受けて来た訳で、優れた外国作品を自国流に仕立て直すことは、この国の映画界=「ドラマ」界の主流だったのである。
 それに、この『デーヴ』だって、過去の名作傑作の成果の上に成立していることを忘れてはなるまい。
 フランク・キャプラの『スミス都へ行く』(や、僕は未見だが、小林信彦が『コラムは誘う』<新潮文庫>で紹介している、同じ監督の『ステート・オブ・ザ・ユニオン』)、チャップリンの『独裁者』からの影響は明らかだし、オットー・プレミンジャーの『野望の系列』や、アラン・J・パクラの『大統領の陰謀』との関係も当然指摘することができるだろう。
 そして、黒澤明の『影武者』も。
 結局、要は、過去の作品から何を受け取り、何を伝えていくかという一点にあるのだと僕は考える。
 その意味で、全ての回を観ていないので断言はできないけれど、『CHANGE』は、『デーヴ』やその偉大なる先達である『スミス都へ行く』の雰囲気の一端を受け継ぎつつも、最期の最期で「似て非なるもの」になっていたような気がする。
 そしてそこにこそ、この国の文化的土壌や政治的土壌、大げさに言えば、社会全体(つまり、僕ら自身)の問題が表されているような気がして、僕には仕方ない。
 正直、アメリカ民主主義(民主党?)の美徳が全面に押し出された『デーヴ』には、初見時辟易すらしたし、政界暴露なら、ほぼ同時期に公開されたティム・ロビンズの『ボブ・ロバーツ』のほうがより鋭いし、有名人のカメオ出演なら、スーザン・ソンタグの出ているウッディ・アレンの『カメレオンマン』のほうがより面白い、と感じたことも事実だ。
 ただ、社会のさらなる変化(悪化)を見るにつけ、たまには、一人こうした『デーヴ』のような夢にも等しき、ならぬ夢そのものの物語に心動かされることも必要なのではないかとも思ったりする。
 特に、ストーリー展開という意味でも、人の心の動きという意味でも、伏線がきちんと落ちるラストは、ぜひとももう一度観てみたい。
 誰か、知り合いで昨日の深夜放送を録画した人はいませんか?
posted by figaro at 14:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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