☆第3回京都学生演劇祭 中瀬宏之の極私的な賞
第3回目となる京都学生演劇祭が、今夜無事終了した。
去年に引き続き、公演のご招待をいただいたこともあり、参加16団体(うち、KAMELEONと劇団愉快犯は再見)と特別公演4団体、あわせて20団体を拝見することができた。
今回の京都学生演劇祭に関しては、開催以前より運営等についてツイッターなどで発言を繰り返してきたが、まずは参加団体の皆さん、実行委員の皆さん、沢大洋さん、ちっくさん、浅田麻衣さんやスタッフの皆さん、審査員の松原利巳さん、田辺剛さん、杉原邦生さんのご健闘を讃えご苦労を労いたいと思います。
本当にお疲れ様でした。
そして、審査員の皆さんの審査、さらには昨年同様、笑の内閣の高間響上皇の審査の屋上屋を架す形となりますが、僭越ながら、中瀬宏之の極私的な賞を発表させていただきたいと思います。
(こちらは、閉会式終了後の交流会で一部発表したものの完全版です。なお、敬称は略、原則パンフレット掲載順とさせていただきます。また、解説文の有無には他意はありません)
*最優秀作品賞:劇団愉快犯『作り話』
昨年の西一風『話の時間』の衣鉢を継いだウエルメイドプレイの佳品。
笑えて泣けて、愉しむことができました。
僕の心の中では、同点の最優秀作品賞です。
*同:吉田寮しばい部『きずあと』
伝えたいことを真正面から伝えようとする作り手の姿勢と、その内容、そして真摯な演技に心を強く動かされました。
評価されにくい作品だろうからこそ、僕は同点最優秀作品賞とします。
*優秀作品賞:ヲサガリ『それからの子供』
*同:喀血劇場『わっしょい!南やばしろ町男根祭り』
*同:劇団紫『天使のはなし』
*最優秀演出家賞:近衛虚作(喀血劇場)
昨年に続いての受賞。
*最優秀チーム賞:飴玉エレナ
飴玉エレナに関しては、山西竜矢君の演技が高く評価されていますが、それには石井珈琲君の演出、そして南秋穂さん、ナッツさん、タジマユリカさん、マツモトサワさんらスタッフ陣との共同作業、チームワークの存在が大きいように感じました。
そうしたことを考えて、僕はあえて山西君個人にではなく、飴玉エレナという一つのチームに賞を捧げたいと思います。
*最優秀主演女優賞:田中沙依(KAMELEON)
イヨネスコという難しいテキストに対する田中さんの悪戦苦闘と、公演開催中の変化は、今後の活躍を期待する意味でも高く評価したいと思います。
*最優秀主演男優賞:小川晶弘君(ヲサガリ)
昨年、優秀助演男優賞の小川君です。
小川君、どんどんよくなっているなあと感心し感嘆します。
京都マラソンも本当にお疲れ様でした。
*同:北川啓太(劇団愉快犯)
かつての月面クロワッサンや劇団テンケテンケテンケテンケの公演では、笑いの面、トリックスター的側面が強く表われていた北川君ですが、今回の作品では彼のシリアスな面での好演を観ることができました。
*同:辻斬血海(吉田寮しばい部)
今は亡き信欣三を想起させる、エロキューションに演技。
拙さの巧さと言いたくなるような、どこか祈りにつながるかのような心からの演技には敬服せざるをえません。
*優秀主演男優賞:河尻光(KAMELEON)
河尻君のぶれない雰囲気、静かな狂気は、強く印象に残りました。
*優秀主演男優賞:コバ(劇団紫)
ちょっと『エスパー魔美』の高畑君っぽい、人が良くてナイーヴで繊細で向日性に富んだ主人公を好演して魅力的でした。
*最優秀助演女優賞:鈴木ちひろ(喀血劇場)
まさしく身体を張った演技。
笑の内閣などでも活躍中の鈴木ちひろさんですが、今後も幅広く活躍していってください。
*優秀助演女優賞:富永琴美(同志社小劇場)
使い勝手がよい、というと語弊がありますが、アンサンブルを重視した作品でのさらなる活躍を心より期待したいです。
*同:葉月(演劇実験場下鴨劇場)
*同:ジェントル(劇団テフノロG)
*同:くらやみ(劇団紫)
*最優秀助演男優賞:伊藤泰三(喀血劇場)
東京乾電池や東京ヴォードヴィルといった、かつての小劇場の俳優陣を思い出す演者さん。
タチバナという小役人の哀歓を演じ切って見事でした。
*同:五分厘零児(吉田寮しばい部)
地方の町で漁業に従事する男のどうにも鬱屈した心情を、真摯に演じていて強く心魅かれました。
*優秀助演男優賞:うめっち(劇団蒲団座)
*同:イマじろう!!!!(劇団月光斜)
*同:谷脇友斗(劇団愉快犯)
*同:三宅陽介(同)
*同:迅(劇団紫)
谷脇君は、最優秀に選ぶべきかどうしようかとても迷いました。
本当に僅かの差での結果です。
イマじろう!!!!君は、その老練さが、うめっち君と三宅君は独特の「フラ」(おかしみ)が、迅君はコメディリリーフぶりが強く印象に残りました。
*最優秀パフォーマンス賞:坂口弘樹、榎本篤志(劇団蒲団座)
劇団蒲団座の観劇記録に記したように、youtubeにアップされた笑いのネタをほぼそのまま、なんの断りもなしに使用した坂口君には、正直失望しているのですが、坂口君、榎本君のパフォーマンスはやはりとても魅力的でした。
繰り返しになりますが、団内事情を一度取り払って、ぜひとも「ノンバーバル」なパフォーマンスに挑戦してください。
きっと「演劇」なんて枠にとらわれないお客さんを得られることと思います。
*最優秀男性キャラクター賞:谷岡和巳(劇団月光斜)
硬軟ふり幅の広いキャラクターを谷岡君はとてもよく造り込んでいたように思います。
素晴らしかったです。
*優秀男性キャラクター賞:髭だるマン(喀血劇場)
*最優秀女性キャラクター賞:右田梨子(同志社小劇場)
悠木千帆時代の樹木希林を思い起こさせる、舞台上に寝そべった右田さんのふてぶてしい感じが、とても印象に残りました。
*最優秀ゲスト賞:永榮紘実(劇団愉快犯)
劇団愉快犯の日替わりゲスト。
ケッペキ所属の永榮さんは、ほんの一瞬で女丈夫ぶりを魅せつけました。
永榮さん、ぜひぜひ今後ともお芝居を続けてください!
これからも愉しみにしています。
*優秀ゲスト賞:横山清正(同)
*最優秀インパクト賞:コロッポックル企画のくすぐり「ワインガルトナー」
巨匠指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーに対抗する指揮者として、フェリックス・ワインガルトナー(第二次世界大戦前に活躍した独墺系の指揮者で作曲家、音楽理論家。ベートーヴェンのスペシャリストとして有名で、戦前来日し、夫人ともども新交響楽団=現NHK交響楽団を指揮しています)を持ち出すなんて。
参考文献(ネットの記事)をそのままひいたのでしょうか?
それにしても、クラシック音楽好きには驚きのくすぐりでした。
*最優秀司会者賞:作道雄(月面クロワッサン)
特別公演のインタートークや大交流会、閉会式、さらには交流会(打ち上げ)と、団体の作品性には踏み込まず、各々の表層をよくとらまえた手際のよい仕切りは、学生演劇祭の方向性との兼ね合いで様々な評価の対象となるかとも思いますが、まずもってその司会者としての技術手腕に関しては、やはり賞を与えておかねばと考えました。
なお、諸般の事情で最優秀秋元康賞の授賞は中止しました。
*ホープ賞:若林りか(コロポックル企画)
作品そのものの評価は置くとして、彼女の創作、表現活動への切実な想いと、開会式閉会式で見せた雰囲気には、「化ける」可能性を強く感じました。
彼女の今後の活動に注目していきたいです。
*同:村上千里(KAMELEON)
学生演劇祭に既成台本、それもイヨネスコでぶつかった村上君の心意気を大きく買います。
*同:左子光治(コントユニットぱらどっくす)
左子君の社会の諸々を笑いのめそうという「向き合い方」と、関西の笑いの骨法の咀嚼のあり様は、これからの活動がとても愉しみです。
さらに刺激に富んだ笑いを待っています!
*努力賞:ヒラタユミ(劇団紫)
ヒラタさんのこの一年の努力、変化はやはり今回の学生演劇祭の中で強く印象に残りました。
今回は、各劇団のモチベーションの有無が強く問われ始めた学生演劇祭でもありましたが、他の劇団に刺激を受けて、より優れた(面白い)作品を造りたい、より優れた(面白い)作品をお客さんに観ていただきたいというモチベーションと、実際の変化に関する評価も、やはり担保されていかなければならないのでは、と僕は強く思います。
それが万一一切失われてしまったとき、この学生演劇祭は存在理由を失ってしまうのではないでしょうか。