作・演出:田中次郎
(2014年4月12日19時開演の回/人間座スタジオ)
初心忘るべからず。
これまでサワガレなどで演劇活動を行ってきた田中次郎が新たに立ち上げた団体、枠縁の第1回目の公演(1作目)『タウン』を観てきたが、田中君はじめ、飯坂美鶴妃、稲葉俊といったかつての西一風(立命館大学の学生劇団)出身勢の初心に戻ったかのような奮闘熱演する姿に、ふとそうした言葉を思い起こした。
『タウン』は、西一風時代に上演したものを、枠縁用に改稿再演した作品だそうだけれど、狂躁(キチガイ)じみて薄気味悪く滑稽で、それでいて痛切な物語が繰り広げられており、田中君(実は、次郎君という呼び方のほうがずっとしっくりくるが)らしい作品だなあとつくづく思う。
田中君自身に、飯坂さん、稲葉君(こうやって稲葉君が付け足しではない役をきちんと演じているのを観るのは、とても嬉しい)、森田深志、岡本昌也、菅一馬、古野陽大(久しぶりに舞台上の古野君を観ることができて、とても嬉しい)、キタノ万里、土肥嬌也の演者陣も、技術的な長短はありつつも、各々の特性を発揮しつつ田中君の世界観に沿う努力を重ねていたと思う。
初日2回目の公演ということもあってか、意図した以上に狂躁性が空回りしていたり、間が合わなかったりと、笑いの仕掛けが活きないなど要所急所が詰まりきらないもどかしさを感じたことも事実だが、これは回を重ねるごとに巧くまとまってくるのではないか。
それと、これは冒頭に記した事どもとも関係しているのだけれど、これまでの経験が演技のそこここに垣間見られる(中でも、飯坂さん)反面、よい意味でも学生演劇の延長線上に劇全体が置かれているように感じられたことも付け加えておきたい。
(作品のアクチュアリティの有無や、演者陣の上手下手といった問題とは全く別の次元の、感覚的な印象として)
いずれにしても、こうやって田中君の作品を実際の舞台として目にする機会が得られたことを、大いに喜びたい。
そして、しばらくは手探り状態が続くかもしれないが、できるだけ長く枠縁の活動が継続されるよう心から祈願したい。