2013年06月08日

C.T.T. kyoto vol.103 2013年6月上演会

☆C.T.T. kyoto vol.103 2013年6月上演会

 前田愛美:『対人関係について』
 アルカリ:『思いやりメロンパン』
(2013年6月8日16時30分開演/アトリエ劇研)


 今回で103回目を数える、C.T.T. kyotoの上演会は、演劇二題。

 まずは、前田愛美作・演出・出演による『対人関係について』が上演されたが、これは前田さんらしさが十二分に発揮された内容となっていた。
 「前田愛美って誰やねん?」という人にとっては(いや、そうじゃなくても)、ミシン台の上でトイレットペーパーと白熱灯が正面衝突したような、「なんやのんこれ?」という感情を惹起させかねないことも想像に難くないけれど、前田さんの切実な表現欲求や内面の思索、tabula=rasaをはじめとした演劇的経験や体験、ばかりか、ある種の鋭い批評性がよく表われたシアターピースに仕上がっていたことも確かな事実である。
 自己撞着に陥る危うさを感じないでもないが、前田さんにはぜひとも演劇活動表現活動を続けていってもらいたいと切に願う。

 一方、アルカリは、筒井加寿子さんが講師・作・演出を務める劇研アクターズラボ+ルドルフ「絶対、大丈夫か」(アクターズラボ公演クラス)の第1期生である高橋太樹=脚本、岩崎果林、多田勘太による三人芝居。
(なお、岩崎さんと多田君は、第2期にも続けて参加しているとのこと)
 上述した「絶対、大丈夫か」の第1回公演『NEVER WEDDING STORY』を彷彿とさせるウェルメイドプレイの作品で、愉しい、でもちょっとばかりシニックな舞台を造り上げようとする三人の姿勢には非常に好感を抱いた。
 ただ、脚本演技の両面で、ああ、惜しいなと感じてしまう時間が多かったことも、残念ながら否めない。
 と言うのも、合評会でも感想を述べたのだけれど、脚本では粘る(もしくは、笑いの「ルーティン」を守る)べき部分と、さらりとかわすべき部分がけっこうずれていたように思うし、演技ではもっとウェルメイドプレイ流儀の軽やかな演技が求めらているものが、つかこうへい風の一本調子な感情表現に留まっていたように思うからだ。
 とはいえ、演者陣三人の特性魅力は充分わかったし(例えば、岩崎さんはコメディエンヌとして重宝されるようになるのではないか。チャーミングだしコケティッシュだし、おまけに芯も強そうだ)、ウェルメイドプレイをじっくり造り込もうという姿勢は、しっかり評価しておくべきだろう。
 今後に期待したい。

 それにしても、彼女彼らの舞台を観てつくづく感じたのは、筒井さんの存在の大きさである。
 一つは、演劇に触れ始めて僅か一年とちょっとの三人に、こうやって自分たちのお芝居を上演したいと思わせたこと。
 そしてもう一つは、『NEVER WEDDING STORY』と『思いやりメロンパン』を比べたときにはっきりとわかる、筒井さんの演出家としての力。
 そんなこと当たり前だと口にするむきもあるだろうが、えてして表に現われたものだけで云々かんぬんされがちなきらいも少なくない分(演出の場合、それも仕方のないことでもあろうが)、あえて一言記しておくことにした。
posted by figaro at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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